ラジオドラマではおそらく唯一の主演。『ドラマ鬼界島』(58分間)。
ネットにもあがってないし、今のところ視聴できるのは横浜の放送ライブラリーだけ。
放送ライブラリーの紹介には、『思いもよらない人事異動の内示を受けた男の怒りと苦しみを、鬼界島に流された僧・俊寛の身に重ねながら描く。』とあります。
https://www.bpcj.or.jp/search/show_detail.php?program=133022
左遷された男を良平さんが演ずるのね。しかも主演!ラジオドラマってどんな感じかなあ。
行ってみました。
放送ライブラリーでは視聴制限時間は2時間ですので、バッチリ二回聴いてきました。
最初は現代の若者たちが就職に失敗してどこか絶海の孤島に行ってみようかと島に旅してみるところから始まり、『♩どんな場所でも同じさ〜♩』ギターに乗せて投げやりな歌声が流れます。
その後営業部長から研究開発室長という良平さん一人しか居ない部署に左遷されることがわかるのですが、この時点で左遷された男が自分の居場所を見つけるストーリーなのかと思ったら、そうじゃない。
ずっと俊寛と同じように戻りたいともがくのです。
しかし。いかんせん脚本が弱い。
左遷されたら別の人生見つける選択肢だってあるんじゃないかなあ。だって営業部長さんだったんでしょ。妻子いるけど多少貯金ぐらいあるでしょう。
奥さんだって早く帰ってきてくれて良かったと言ってるし、と、思うのは40年という時代の差でしょうか。
当時のモーレツサラリーマンが美徳だった時代性も鑑みて、仕事一筋の男がひたすら返り咲きたいと願う姿に納得したとしても、島流しされた俊寛の経験した惨めさを感じるエピソードの重さと現代の左遷された男の惨めさが釣り合わないので、結局何を言いたいのか分からず終わるのです。
58分という時間は決して短くないので、も少し現代の男が体験した酷いエピソードや冒頭に出てきた若者たちを絡ませるとかしても良かったのでは。
これで1977(昭和52)年度文化庁芸術祭優秀賞?
能楽を流したりして芸術っぽくはしているんですが、当時は意欲作だったということかもしれませんね。
うーん、折角の主演作なのにな。ファンとしてはがっかりな一作でした。