映画デビュー前の新演劇研究所(以降、新演と呼びます)時代を一緒に過ごされた三條三輪さんの戯曲集『聖都市壊滅幻想』(カモミール社・1999年)に掲載の自伝的エッセイ『女優と医師との二足のワラジ』(初出は演劇雑誌『テアトロ』1996年5月~9月号)。
如何にして女優を志すことになったのか、生い立ちや新演時代の思い出、ご自分の劇団を立ち上げられたときのことを書いていらっしゃいます。大変面白いエッセイなのでぜひご一読を。
新演時代の仲間については、
"皆で何かしようという時、何となくリーダーシップをとるのが~"杉浦直樹、
"「僕は演技するとき、その人の皮の中に入っちゃうんだ」という名言を思い出す~"小松方正、
"少年の面影を残し、アドニスか匂の宮かという実に美青年だった~"寺島幹夫、
"天衣無縫の詩人"良平さん、などその後も活躍する俳優たちの若き日の姿が活写されており楽しく読みました。
三條さんが"みんな忘れられない"と書くのが良平さんの"ハチマキで勇壮に踊りまくる正調大漁節、ロマンティックに甘くうたう「ぐみの木」~"です。
さっそく調べてみたところ、正調大漁節は故郷・銚子で長く歌い継がれているものですが、
「ぐみの木」は1950年代に日本で歌われていたもので『ウラルのぐみの木』、『小さいぐみの木』と2つあるようなのです。
タイトルは似ていますが『ウラル~』は1953年以降ロシアで発表されたもの、
『小さい~』はロシア(ウクライナ説あり)民謡だそうです。
『ウラル~』は二人の若者の間で揺れる女心、『小さい~』は男女の悲しいすれちがいをうたっています。
いずれも劣らぬ美しいメロディで、日本語の訳詞も格調高く素敵な歌です。
管理人は『小さい~』をロシアの俳優さんが女性歌手とデュエットしている動画が映画のようですっかり気に入ってしまって、良平さんだったらどんな風に歌ったんだろうと思うのですが、
『乙姫様の玉手箱』(潮出版社・1984年)に出てくる、良平さんの少年時代の"キクヨ"のエピソードを読むと「ぐみの木」=『ウラル~』かなーと想像してしまいます。
どちらも恋多き良平さんの胸に迫る歌であったことでしょう。
日本語歌詞や実際の歌は動画サイトにいっぱい上がっているのでご興味のある方は探してみて下さいね。