良平さんの新演劇研究所時代の恩師・下村正夫先生と武智鉄二が学生時代からの友人だったこと、
新演劇研究所の舞台パンフレットに武智鉄二が寄稿していたことは前に書きましたが、
良平さんについて武智鉄二がどんな評価をしていたか知りたく思い、資料を探してみました。
そこで見つけたのが舞台パンフレット1968年10月公演『双頭の鷲』。
丸山明宏(現・美輪明宏)主演です。
良平さんの欄で、"良平さんの横顔"と題して武智鉄二が書いていましたので紹介いたしますね。
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~(略)~世間の人は、大部分、良平さんのことを、~(中略)~映画のスターとして、また、テレビのタレントとしてしか認めていないようである。
しかし、私などは、より以上に、役者としての良平さんを認め、期待している。良平さんが、新演時代、「真空地帯」や「検察官」で示した舞台、その演技、役者ぶりは、いまも目に残っている。
そのころの、良平さんの先生は、世にもうるさきスタニスラフスキー派の頭目、下村正夫であった。~(中略)~
このうるさき下村正夫に、骨の髄からスタニスラフスキー・システムを叩きこまれ、あれだけの名演技を示した内田良平が、世の並みの俳優であろうはずがない。
下村の愛弟子とあれば、私にも、同族のような気がしてならない。いつかいっしょに仕事をしてみたいと、かねてから念願していたものである。
その思いがかなって、私の映画「幻日」で、主演してもらった。~(中略)~主役の良平さんの役は、能面師という難役で、役柄の理解もたいへんむつかしいものなのだが、良平さんは、この手のつけようもない難役を、みごとに演じこなしてくれたのであった。
このように、難しい役であればあるほど、多々ますます弁ず、うまくやりこなす良平さんであるが、それでいて、晦渋におちいらず、役者らしい色気、むんむんする男らしさをただよわせているところが、良平さんの魅力であり、スター的素質といえるだろう。
この精神のみずみずしいまでの若々しさ、これは本質的に詩人であることに由来しているのかも知れない。彼は詩を作るし、また、このような詩的言語も口ずさむ。私はこのようなせりふが、「幻日」撮影中のヨットの上で、彼の口から洩れるのを聞いた覚えがある。
「海は静かだなあ・・・海も夜は眠るんだなあ」
女の子にも、もてるわけである。
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半分やっかみ?冷やかしたような一文で終わるのが笑ってしまいますが、歯に衣着せぬ厳しい舞台評論家でもあった武智鉄二が良平さんをほめているのは嬉しいですね。
あらためて『幻日』を観てみたくなりました。