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『この広い空のどこかに』1954年11月23日公開 松竹大船

主演:久我美子

監督:小林正樹

脚本:楠田芳子(潤色:松山善三)

 

 

あ~久我美子になりたい!

切実に思いました。

 

だって天下の二枚目・佐田啓二が夫、

幼馴染で自分を好きでいてくれる男が内田良平ですよ!

なんという贅沢!

タイプの違うハンサムから好かれるって困っちゃう~、どうしよう~?と映画なのに真剣に悩んでしまいました。

 

これで佐田啓二が頼りない夫だったら、久我美子も揺れるのでしょうが…。

姑・浦辺粂子&小姑・高峰秀子という敵に回したくない最強コンビから妻をかばうわ、妻の幼馴染の男に手土産を持たせるわという、現実ではあり得ない、だけど佐田啓二ならあり得るかも、うん、と観客を納得させてしまう良く出来た夫なので、久我美子もそれほどよろめかずに済むのですね。

 

良平さんは本当は久我美子のことが好きなんだけど、男らしく自分の感情を抑えます。

『ご主人が待っているから早く帰った方がいい』と彼女を送り、佐田啓二に会うとちゃんと挨拶をして、故郷に帰るというなかなか難しい役どころ。

良平さんがやると、『この人は孤独な人なのかも。ふるさとに帰ってもやってけるかな』と思わせ、強い印象を残していました。

 

佐田啓二と高峰秀子の弟役、石濱朗が『映画監督小林正樹』(岩波書店・2016年発行)で語っていますが、内田良平の演じた役がなかなか決まらなくて、やっと決まったとき、小林正樹監督が『彼、なかなかいいだろう』と石濱朗に言ったそうです。

良平さんの映画出演の初期は小林正樹監督が多いのですね。

 

小林監督が良平さんのどこを見込んだのか、もっと詳しく知りたい気がしました。