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『壁あつき部屋』1956年10月31日公開 松竹(撮影時29歳)

1953年に撮影していたにもかかわらず、GHQの目を恐れて、3年もお蔵入りしていたそうです。

メロドラマ『君の名は』で清純派女優として当時人気絶頂期の岸惠子が米軍相手の娼婦の役ということで、イメージダウンになるやもという会社側の配慮もあったとか。

でも、岸惠子の登場シーンはたった2回だけで、娼婦として登場するのは後半ですし、当時の映画ポスターには大きく岸惠子の顔が出ていますが、ストーリーには深く影響してきません。

やはりGHQ対策なのでは、という気もします。

 

巣鴨プリズンのB・C級戦犯が入れられている房から話が始まり、それぞれの囚人のバックグラウンドが語られるので、最初誰が主役なのかよくわからないのですが、上官の小沢栄(小沢栄太郎)の命令で現地人を殺したのに、上官からしらばくれられ、深い恨みを抱いて脱獄をくわだてる浜田寅彦が主役なのだと後からわかってきました。

 

良平さんは三島耕演じる英語通訳で浜田寅彦と同じ房にいる男の弟役。

登場シーンは兄との面会シーン2回に、兄の思い人であり、娼婦となった岸惠子と話すシーンの1回だけですが、浜田寅彦が脱獄しようとした時の話を兄から聞きとり、左翼系雑誌に書いたため、浜田寅彦が三島耕と絶交するきっかけになるという、重要な役です。

二回目の兄との面会シーンでは左翼の活動家になっているのですが、微笑んで『平和主義者はみんな左翼さ』と言う表情が良かった。

最初の面会シーンから比べて自分の信念に基づいて人生を生きている、成長している、という感じがよく出ていました。

 

で、良平さんの書いたものに依れば、この映画で岸惠子との交際が始まったそうです。

岸惠子の運転する車に追いすがって口説いたのだとか。

飛ぶ鳥落とす勢いの大スタアに新進俳優が猛烈にアタックしたわけです。

1970年代、週刊誌のグラビアに『私の女ともだち』というタイトルでご両人のツーショットの写真が出てました。

 

 

イヴ・シアンピと彼女が結婚したとき、『とっても悲しかった』と書いた良平さんですが、きっと大人のいい関係でいたのでしょうね。